2016年に公開され大ヒットとなった映画「聲の形」。
主人公は先天性の聴覚障害を持つ西宮硝子と同級生の石田将也です。
2人は繊細で不器用な10代。
この2人を通して心の機微を丁寧に描き、幅広い層から支持を集めました。
最も多かったのが「2人はつき合うのか」「その後は2人はどうなったのか」という疑問です。
シリアスな場面も多く、深い内容の映画ですので、せめて主人公の西宮硝子と石田将也が最後は付き合うハッピーエンドが期待される映画ですが、考察してみたいですよね。
映画「聲の形」の主人公の2人は付き合うのか、そしてその後の2人はどうなるのか、考察していきますね。
聲の形の西宮と石田は付き合う?
完全に『聲の形』の石田と西宮だな https://t.co/a6OHzNbnh7 pic.twitter.com/F3fT4EJmf4
— せん虎る (@TORA_INOCCHI) August 10, 2024
映画の主軸は恋愛ではありません。
人の思いやりや優しさ。
でも、なかなか素直にそうなれない複雑さ、悲しさです。
だからこそ、せめて主人公の2人には付き合ってもらって、ホッとさせてもらいたいですよね。
西宮と石田は付き合わない!
映画では残念ながら西宮硝子と石田将也は付き合いません。
映画の最後のシーンで西宮硝子に石田将也が決定的な一言である「俺の生きるのを手伝って欲しい」と伝えたのですが、西宮硝子はその答えを言わぬまま、エンディングとなってしまいます。
どうでしょうか。
映画の流れから、いろいろあった2人だけれども最後は付き合って、結婚するという流れが自然なような気がしますよね。
でも、そうはならないのです。
「聲の形」という映画が恋愛映画ではなく、原作のテーマもそこにはないため、2人が最後に付き合ってしまうと軸がぶれてしまうのでしょうね。
「西宮硝子に石田将也の恋の行方」ということに関しては、何となく淡い期待を持たせてフェードアウトしてしまう。
そこに心地良い余韻がありますね。
2人の関係性の起点はいじめ
石田将也は、聴覚障害を持つ西宮硝子をいじめた過去があります。
2人が小学校の時のことです。
石田将也のいじめによって西宮硝子は心に深い傷を負いました。
しかし、石田将也のいじめがあまりいひどいので、石田将也もクラスのみんなからひんしゅくを買っていきます。
担任の教師も石田将也一人を加害者にすることで、いじめ問題を終結させてしまいます。
このことで今度は石田自身もまたいじめを受けるようになっていきました。
クラスのいじめの矛先は石田将也に向かい、最後は石田将也が自殺を考えるところまでいじめはエスカレートしていきます。
西宮硝子と同じように心に闇を宿すようになり、きっとこの時に自分が聴覚障害を持つ西宮硝子をいじめたことが、どれだけ残酷で罪深いことだったのか、自身の体験を通して学ぶことになります。
2人の関係性は相手を傷つけ、傷つけられるいじめから始まっているのです。
時間が2人の関係性を変えていく
しかし、高校生になると石田将也も次第にいじめから解放されていきます。友達も少しずつできていきました。
西宮硝子も石田将也のそんな状況に安心し、喜んでいました。
ところが事件はここで起こります。
石田将也が西宮硝子をいじめていた過去が明らかになってしまったのです。
このことで石田将也はせっかくできた友人と喧嘩をし、別れてしまいます。
石田将也にまた孤独な時間が戻ってきてしまいました。
そこで西宮硝子は責任を感じてしまいます。
石田将也にせっかく友達ができ、幸せな生活を送っていたのに、それを「自分が壊してしまった」と考えるようになってしまったのです。
「自分が消えればみんな幸せになる」
そう考え、とうとう自殺をしようとまでします。
自殺は石田将也に助けられて、未遂で終わりましたが、西宮硝子は自分の命をかけてまで石田将也の幸せを願ったのですね。
石田将也の方もまた命がけで、水に飛び込もうとした西宮硝子の代わりに自分が落下してしまい、昏睡状態にまでなってしまいます。
結果的に石田将也も助かりますが、互いが互いに思い合う。
「好き」という感情が2人の間に満ち満ちていますよね。
「好き」が届かずすれ違い
西宮硝子と石田将也。
2人が互いを思い合っているのに、「付き合う」というところにまで発展しません。
じれったいですよね。
でも、西宮硝子が行動にでます。
石田将也に「好き」と伝えるのです。
ところが!
言葉は伝わりませんでした。
石田将也は西宮硝子の「好き」を「月」と勘違いしてしまうのです。
うまく話せない西宮硝子、あわてんぼうの石田将也、2人はすれ違ってしまうのです。
聲の形の西宮と石田のその後についても考察
映画 「聲の形」
登場人物達の不可解な行動に「なんで?」と問いかけるのは野暮なんだ。
常識というものさしは通じない。不器用な人達がなんとかしようとする映画だ。こんなの泣くしかないだろ。 pic.twitter.com/eZZqmCbKkY— オクターヴ (@TreeTre93040406) July 8, 2024
「I LOVE YOU(アイ・ラブ・ユー)」という言葉を「月が綺麗ですね」とでも訳しておけ、と言ったのは文豪、夏目漱石ですよね。
「好き」と「月」……。
作者はきっとこの夏目漱石の話を知っていたのだと思われます。
その意味では西宮硝子の「好き」という言葉は確実に石田将也に伝わっていたはずです。
ですから、この後、2人はどうなっていったのか。
気になりますよね。
見ていきましょう。
ラストシーンはまるで結婚式
映画では2人はつき合いません。
けれども、別れたわけでもありません。
2人は好き同士、これは事実です。
では、2人はどうなっていくのでしょうか。
映画にはありませんが、「聲の形」の原作漫画では西宮硝子と石田将也は高校を卒業した後、それぞれの道を歩み始めます。
西宮硝子は美容師を目指し、石田将也は理容師になる夢を抱いて東京へ出ていきます。
その後、東京での二人の様子については明らかになっていませんし、やはり2人が付き合ったかどうかも分かっていません。
互いの家族も相手に好感!環境はバっちり
西宮硝子は石田将也の友人関係を「自分が壊してしまった」と考え消えようとする。
そのために自殺まで図りました。
それを石田将也が助けます。
そしてその後に西宮硝子に石田将也が言った言葉が「君に、生きるのを手伝ってほしい」。
「君に、生きるのを手伝ってほしい」って、なんてすばらしい言葉なんでしょうか。
「一生一緒にいて欲しい」って言っているのと同じですよね。
「好き」→「月(アイ・ラブ・ユー)」→「君に、生きるのを手伝ってほしい」
キマリですね。
そもそも辛さを乗り越えた西宮硝子と石田将也は、互いに何もかも知り尽くしている理想の関係です。
決定的なのは西宮硝子の母と妹です。
2人とも石田将也のことをとても好ましく思っているのです。
一方で石田将也の家でも西宮硝子には優しく温かく接しています。
互いの家族が相手を良く思っている、もう結婚の環境は万全じゃないですか!
まとめ
映画の結末は文化祭当日です。
石田将也と友人の永束たちとの関係は最悪でしたが、文化祭当日に登校してきた石田将也の手を西宮硝子が取って学校内を見て回ります。
そして、硝子のために作られた無音映画を鑑賞した将也は、涙を流し「最高」と叫びました。
これをきっかけに仲違いをしていた永束たちクラスメイトと和解し、文化祭をみんなと楽しむのでした。
これで映画「聲の形」は完結します。
「聲の形」の軸はいじめの悲しさ、それを乗り越える強さ、優しさ、友情です。
それを西宮硝子と石田将也を通して教えてくれています。
恋愛ものではないので映画でも漫画でも2人は結婚せず付き合うこともありません。
考察してみましたが、「2人はつき合うのか」「その後はどうなったのか」という疑問にはあえて答えていません。
でも、「2人はつき合うのか」「その後はどうなったのか」とハラハラしながら、最後まで見る、それがまたいい余韻になる仕掛けなんですね。
よくできた映画ですよね。
考察してみました!