田中角栄の記憶力と良さは良く知られるところ。しかし、凄みは自分の記憶力を信じ、人前でやってのけるところでした。その豪胆さ。行動力。次々と人の心を捉(とら)えていきました。
面白いので是非、ご覧ください。
●初対面の新入省キャリアの名前を次々とそらんじた。
●決して間違わない。
●「できる」と「やる」は天と地の差
1 小学校卒だが俺はできる
「バーン」。大蔵省の大臣室。ドアをあけ田中角栄が勢いよく入ってきました。待っていたのは新しく入省するキャリア官僚20人。一列に整列する彼らの名前を田中角栄は一人ずつ名前を読んで行きました。
「やあ、青木くん。大蔵省へようこそ」
「加藤くん、よろしく」
「佐藤くん、頑張ってくれ」
ガッチリ、握手をしながら一人ずつ。まったくメモもみないで。初対面のキャリア官僚たちは、ど肝を抜かれます。
「なんで僕らの名前を知っている?」
全員が「大蔵大臣が僕らの名前を知ってくれている」と嬉しくなったといいます。そして、「僕らは選ばれた。国のためにがんばろう」と自負が芽生えたのだそうです。
この場に居合わせた後に経済学者となる野口悠紀雄さんも「凄いなあ」「恐ろしい人だ」と感心し畏怖の念を抱いたそうです。そして同時に「小学校しか出てないんだろう」という思いも消えたといいます。
大臣室にいたキャリア官僚の卵たちは東大をトップクラスの成績で卒業した秀才中の秀才。記憶力は抜群です。20人くらいの名前を覚えることくらい、この列にいた20人なら誰にでもできたはずです。
しかし、100%でないとなりません。人の名前は間違えることは許されない。しかも新しく入省する国を背負ったキャリア官僚の卵たちですからね。それを田中角栄はやってくれた。当然、田中角栄を好きになる。それが人というものです。
2 問題はやるかやらないか
「やるか、やらないか」
角栄の凄みはここなのです。「やる」のです。肩書がない田中角栄は「やる」ことで自分の実力を示した。それが田中角栄の凄みなんですね。
仮におなじ政治家であっても商工省出身の岸信介だったらどうでしょう。岸信介も「怪物」「妖怪」と異名をとった大物でしたが、決して田中角栄のような行動はしないはずです。
代わりにこんな手を使いました。
「キミ、名前は何だったかな」
「鈴木です」
「いや、もちろんそれは知っているよ。僕が聞いているのは下の名前だ」
実に頭がいいやり方です。決して失敗はしない。でも、このやり取りで、岸信介のことを好きになる人はいないでしょう。
田中角栄との違いはここなのです。
まとめ
田中角栄の記憶力と良さは良く知られるところですが、それだけじゃないんですね。
凄み。
自分の記憶力を信じ、人前でやってのける凄みなんですね。
その豪胆さ、行動力が次々と人の心を捉(とら)えていったのです。
田中角栄ってすごい政治家なんですね。