俳優、東出昌大に復活の兆しです。
東出さんは2020年から2022年にかけて、女優の唐田えりかさんとの不倫で女優の杏と離婚、その後も不祥事が続き芸能界からは事実上、追放された形となっていました。
その後は世捨て人さながらの山ごもり生活です。
人々は東出さんを忘れました。
しかし、ABEMAのバラエティ番組『世界の果てに、東出・ひろゆき置いてきた』の影響もあってか、ここに来て世間の目が変わり、追い風が吹いてきました。
挫折を乗り越え自分らしく第二の人生を生きていこうとする姿に「変わった」「真摯になった」と見方を変えてきたのです。
理由は様々あるでしょう。
でも最も影響が大きかったのは狩猟です。
「命と向き合うことを教えてくれた」。
とてもよいお話なのでご紹介させて頂きますね。
是非、お読みください。
●スキャンダルのあと東出さんは山ごもり
●東出さんの狩猟スタイルは?
●狩猟で何を考えた?
事務所から契約を解除され、山ごもりへ
2020年、杏さんと離婚した後も、東出さんはひどい生活でした。映画のロケ地で宿泊先に女性を連れ込んでいたことも報じられ、所属事務所からは2022年2月、契約を解除されてしまいます。
スポーツ紙の記者によると、その時の経緯はこうです。
「’20年の唐田えりかさんとの不倫騒動後も所属事務所は彼をフォローしてきましたが、その後も女性関係の報道が続いたことで《これ以上共に歩くことはできない》と事務所が異例のコメントを出して、契約解除に至りました」
以降、逆風は吹きっぱなし。母親と食事をしている様子まで批判的に週刊誌に書かれ、東出さんも世間の目を恐れるようになりました。
「誰かが自分を見ていると『記者じゃないか』とすぐ考えてしまう」
人の目を避けたい。都会を離れたい。東出さんはそう考えます。
そして事務所と契約解消により「東京で居を構えようと思っても、賃貸契約を断られ続けた」こともあり、“こっちに住めばいい”と山に住む友人の誘いに応じて、山にこもる道を選択したのです。昼間は山に入り狩猟をし、夜は読書をして過ごす。そんな日々が始まりました。
「命って何だ」。もともと狩猟に強い関心
東出さんは衝動的に山に入ったわけではありません。
もともと狩猟には興味がありました。
スキャンダルが発覚する前の2017年に『西から雪はやって来る』(宝島社)という写真集を出版していますが、この中で狩猟シーンの撮影をしたことがきっかけで、狩猟の世界に興味を持ち始めたと言います。
東出さんは写真集の中で、荒れた海にタコ漁に出るなど様々な経験を写真家に撮ってもらっていますが、自分でイノシシを罠にかけて解体する姿もおさめています。
撮影で狩猟・料理指導を務めた安部達也氏はこう語っています。
「写真集の撮影で、東出さんは“命が消える瞬間”を初めて目にしたイノシシを、自らさばいて食べました。思うところがあったようで、そのときに私が“猟師になるか?”と聞いたら“なりたいです”と答えていました」(週間女性 2022 4月12号)
東出さんはこの時の思い出について「イノシシにトドメ刺して、その時の経験がものすごくて」と刺激を受けたと話し、「そこからついに狩猟免許も取り、猟銃の所持資格も取って」と告白しています。
そして「すごいナイーブな問題」と断りつつ、狩猟が持つ残酷な一面についても語っています。
「命ってなんだ? 普段食べてる食べ物ってなんだ?ってすごい衝撃だったんです」( エンタメRBB 2018.10.18)
「食べる」ということは「生きる」ということ。
「命ってなんだ」
「生きるって何だ」
この時から東出さんは考えはじめていたのです。
そして東出さんは狩猟生活に入っていきました。
狩猟はゲームではない。命を貰うこと。
山にこもっての東出さんの狩猟生活はいたって真面目なものでした。関係者はこう証言しています。
「東出さんとは、’17年の写真集の撮影で知り合って、今回も本人から連絡をもらって、同行しました。彼はとてもまじめな青年で、“獲った動物を自分で料理したいので、教えてほしい”と言われました。“釣り”の延長で狩猟を始める人も多いのですが、彼は“ゲームとして楽しむのではなく、命に向き合いたい”と話していました」
スキャンダルにより最底辺にまで落ちた東出さん。3人の子供とも離れ離れになり、生きる希望をなくしたことは一度や二度ではなかったはずです。最悪の事態を考えたこともあったでしょう。
しかし、狩猟を通して、東出さんは自分の命の尊さを学びます。
動物の命を貰って自分は生きている。自分の命は、他の命の犠牲のうえに成り立っている。そう考え、必死に生き続けたのです。
狩猟生活をテーマとした東出のドキュメンタリー映画で流れが変わる
2024年2月。流れが変わります。東出さんが狩猟をする姿を追ったドキュメンタリー「WILL」(エリザベス宮地監督)が公開されたのでした。およそ1年にわたり追ったドキュメンタリー映画です。話題となりました。
映画について東出さんはこう語っています。
「この映画は、あくまでも監督から見たその瞬間の〝東出像〟にすぎないので、それを残すのは俳優業にとってはリスクしかない。だから僕は見たくないし、人にも勧めない」
「それでも、自分自身に得はなくても『ドキュメンタリー映画という文化に貢献できるならよい』と思い、撮っていただきました」
一連の騒動があった時の東出を450時間にわたって撮影した監督の力作。東出が週刊誌カメラマンの直撃を受ける様子や、自身のスキャンダルを報じた女性週刊誌に目を通す場面まで収録されています。
全部、素っ裸になって潔く自分をさらした東出さん。YouTubeでのコメントはこうです。
「もう世間の目は気にしない」
「世間の評価はもういい。自分の命を生きる」
「一体、人間って素敵なのか」
東出さんが山に入り、忍び猟を始めてから6年目。猟友会にも入りました。最初に獲物を仕留めて命を奪った際は、喪失感や拒否感が湧く一方、捕った喜びもあってさまざまな感情がないまぜだったといいます。
ただ、その衝撃はとてつもなく大きいものでした。
「感情が容量500ミリリットルのビーカーだとすると、1頭目で200ミリリットル分ぐらいのことを感じました。それが続いていたら心はとっくにパンクしていたでしょう」
「武器を持たない動物と猟銃を手にする人間とでは決して対等とはいえません。でも、裸一貫で食べ物を求め、生を謳歌する動物に対し、大勢の人が自死を選び、少なからぬ人がスマホに時間を取られて生の実感が湧かないほど精神が疲弊している現状を見ると、一体、人間って素敵なのか」
東出さんはこれまでの生き方を180度、変えたのです。
そして新しい役者として生まれ変わる決断をします。
「どんな生き方をしてきたかによって顔がつくられるのだとしたら、人より変わった体験をできるのが狩猟ですからね。そういう見た目になっていてくれればいいなと思います」
周りの人に野菜や酒を分けてもらい、みんなで食べて飲んでの日々。「精神衛生上よくない場所から離れている実感がある」とも言いますが「いずれ、この人を見ていたいというような顔になれればいいかなあ」。
本当の役者魂が芽生えたのですね。
映画では、猟の対象となりながらも食肉処理・加工施設や供給ルートの未確立などにより、肉として流通させられず、埋設処理などがなされる“害獣駆除”の実態も紹介されています。
「ハンターの高齢化で今や9割の個体がただ捨てられるというのが現状です。捨てられてしまうだけの命は寂しいですが、かといって、ゲーム感覚でバンバン撃っていっぱい殺したいというだけの人が増えるのも怖い」
「この数年で仕事がガーンと減り、全てをなくした気がしていましたけれど、仕事がなくなっても生きていかなくてはいけません。自分を木の幹とすれば仕事は枝。枝がなくなっても幹は生きていかなくては……。狩猟は今、幹をなす一部です。今後もこうやって生きていこうと思っています」
インタビューで心境を尋ねられた東出さんはこう答えています。
「幸せです」。
「週刊新潮」2024年2月15日号 掲載
ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。山にこもりギリギリの生活をしながら命を考えた東出さん。外見には優しさと強さが加わり、役者として一皮も二皮もむけた感じがしますよね。内面も大きく成長したに違いありません。スキャンダルでどん底にまで落ち、それでも必死に生きようとする姿に共感を覚える人も多いはず。東出さんの復活を期待したいと思います。
以下、まとめとなります。
●スキャンダルで行き場を失い山ごもり生活。狩猟で生き始める
●他の命に生かされている自分の命を知る
●どん底から生き直そうと懸命に努力する東出さんへの共感が少しずつ増え始めている