2024年は選挙の年。米国では大統領選、日本では自民党総裁選、東京都知事選もありました。
印象深いのが都知事選を制した小池百合子氏です。
主婦層を中心に知名度、人気は抜群で公明党などとのパイプもあり支持基盤も強いものがあります。
東京知事3選、次はやはり自民党総裁選候補者としても名前があがり続けています。
しかし、ついて回るのが学歴詐称問題です。
小池氏がテレビキャスターから政界に転身したころから出ていた問題ですが、昨年末、小池氏と2年間、ルームメイトとして過ごした人物が実名で登場し「小池氏のカイロ大卒というのは学歴詐称だ」と告発しました。
●小池氏が「カイロ大首席卒」の根拠
●ルームメイトはなぜ詐称というのか。
●カイロ大側は?
公式サイトに堂々と公表
「アラブ世界の将来性が大きい」からカイロ大学へ
「東京都知事、小池百合子」の公式サイトを見ますと、略歴の欄に「1976年10月カイロ大学文学部社会学科卒業」とあります。
留学の理由は「アラブ世界の将来性が大きいと考えたから」、また「日本ではブルーオーシャンであるアラビア語取得者は貴重になると考えた」としています。
留学の決意を伝えた時、小池氏の母親は「いいチョイスね、卒業するまでは帰ってこないこと」と即OKだったとのことです。
卒業する時にはピラミッドに登ることを目標にしてカイロ大学時代、努力を重ねたといい帰国してから『振り袖、ピラミッドを登る』を執筆しています。
1971年 関西学院大学に進学
お金持ちのお嬢様学校として知られる甲南女子中学校から甲南女子高校と進み、1971年に関西学院大学社会学部に入学します。
甲南女子高校の大半の同級生がそのまま甲南女子大学に進むのを後目に関学進学を選んだことからも、小池氏の意識の高さが伺い知れます。
しかし、関学は1学期で退学してしまいます。
そして1971年9月にエジプトに渡り、はじめの1年間はカイロ・アメリカン大学東洋学科でアラビア語を学びました。
小池氏は中高時代、英語は熱心に勉強し、発音の美しさで周囲を驚かせたこともあったほどですが、アラビア語はほとんど勉強したことがないため、まずは現地の語学学校でアラビア語を学ぶという選択をしました。
1972年10月にカイロ大学を受験し、文学部社会学科に入学します。
カイロ大学は英国保護下にあった1908年に創立された名門国立大学でして、アラブ諸国からも優秀な留学生が集まることで知られています。
相当の難関大学ですから、アラビア語もろくすっぽできない留学生が、たった1年の勉強で合格したとすると、小池氏は相当の頭脳の持ち主ということになります。
1972年10月、カイロ大学を「首席」で「卒業」
小池氏のカイロ大学への「入学」、「首席」「卒業」は政治家、小池百合子に常につきまとってきた疑惑でした。
アキレス腱と呼ぶ人もいます。
「入学」については原油卸売業を営む父親がエジプトにもパイプを持っており、その伝手(つて)を頼ってコネでねじ込んでもらったという証言もありますが、正規、非正規は別として何らかの方法で実現させたとみられます。
ただ、「卒業」、とりわけ「首席」だったという点はかなり疑わしいのが事実です。
都議会でもこの点は問題となっており、三宅正彦都議から「(カイロ大学を)首席で卒業したというのは間違いであるということでよろしいでしょうか」との質問を受けています。
これに対して小池氏は「わたくしが卒業致しました際に、教授のほうから大変いい成績であったと、トップであったということを聞きまして、大変嬉しく思って、その旨を書いたところでございます」と答弁しています。
また、定例の記者会見でもほぼ同様のやり取りがあり、その際にも「当時の担当教授の言葉をうのみにした。
そのことでうれしくなって、その旨を記述したということ」と弁明しています。
実に小池流です。
仮に教授の方から「大変、いい成績であった」との言葉をかけられたのが本当だったとしても、それをもって「首席」と公表するでしょうか。
著書の『3日でおぼえるアラビア語』(昭和58年刊行)の奥付には「カイロ大学文学部社会学科を、日本人として2人目、女性では初めて、しかも首席で卒業」と書いてありますが、この時点では自分が国会議員、日本の首都の知事にまで上り詰めるとは考えていなかったのでしょう。
学歴詐称は公職選挙法違反
「首席」卒業については弁明した小池氏ですが、カイロ大学「卒業」の詐称疑惑はきっぱり否定しています。
都議会の代表質問内でカイロ大卒業の「経歴詐称疑惑」について問われた際も、何度も「卒業している」と主張しています。
ここは小池氏も譲れない一線だといえるでしょう。
なぜなら、卒業もしていない大学を卒業したとして選挙に当選したとなると公職選挙法違反に問われるからです。
ですから都議会で「この際、いらぬ疑惑は晴らしてほしい」と何度、問われても「これまで何度も申し上げているが、正式なカイロ大の卒業証書と卒業証明書を有している。大学側もこの卒業を認めている」と言い切るしかないのです。
ただ、小池氏がカイロ大学を「卒業」したか、または正式な手続きで卒業の資格を勝ち取ったかは判然としませんが、小池氏のアラビア語が名門大学であるカイロ大学卒業のレベルに達していないことは間違いありません。
重要な対談で「とてもよい面会」を「美味しい面会」と言い間違えたり、カダフィ大佐訪問時にもほとんど会話できなかったことなど証拠は限りなくあります。
権力は絶対に手離せない
「卒業したことを証明する」
小池氏のカイロ大学卒業が嘘だとする石井妙子氏の『女帝 小池百合子』(文藝春秋、2018年)は、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、ベストセラーにもなりました。
根拠はルームメイトの証言でしたが、この著書の弱点はルームメイトの名前が仮名であったことでした。
しかし2023年になって本人が実名を明かし、「都知事の要職にある人がウソをつき続けるのが許せない」として、改めて告発しました。
押さえておかなければならないのが、当事者であるカイロ大学です。
エジプトのカイロ大学は2020年6月、小池百合子東京都知事が「1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する」との声明を発表しました。
在日本エジプト大使館がフェイスブックで声明文を公開しました。
小池氏の卒業証書は「カイロ大学の正式な手続きにより発行された」と説明し、「日本のジャーナリスト」が信頼性に疑問を呈したことについて、「カイロ大学及びカイロ大学卒業生への名誉毀損(きそん)であり、看過することができない」と批判し、「エジプトの法令にのっとり、適切な対応策を講じることを検討している」と警告までしています。
ルームメイトが見せた覚悟
ルームメイトはそのうえで実名を明かし告発を続けています。
カイロ大学が「卒業を証明する」としていることを知ったうえでの行動です。
それでもまだ「嘘だ」と主張するには相当の覚悟と証拠があるはずです。
疑念は依然、晴れません。
疑惑はくすぶり続けるでしょう。
だからこそ小池氏は権力を手離せません。
浮かんでは消え、消えては浮かぶ疑念を権力の力で振り払い続ける必要があります。
自民党総裁選、東京都知事選で小池百合子の名前は登場し続けることになるでしょう。
まとめ
●カイロ大学「首席」での卒業は弁明
●カイロ大学「卒業」は譲らず
●カイロ大学側は「小池氏が卒業したことを証明」
●疑惑を抑え込むために権力は手離せない