土葬(土に埋葬すること)ができる墓地の整備をめぐり、今、自民党内で大きな意見の対立が起きています。
これは日本で暮らすイスラム教徒(ムスリム)の方々の「最期の願い」と、日本に住む人々の「地域の安全・安心」という、どちらも大切な願いのぶつかり合いです。
この問題は、どちらか一方だけが正しいとは断言できない、非常にデリケートな論争です。
「認める」側の主張:信仰の自由と人権の尊重(日本の埋葬の現実)
土葬墓地の整備を「認めるべき」と主張する側は、主に宗教上の理由と人権の尊重を根拠にしています。
ムスリム人口の増加と土葬墓地の「1%」未満の現実
日本で生活するムスリムの人口は、現在40万人以上と推定されています。
この10年間で約2倍に増加しました。
彼らにとって、遺体を焼く火葬は故人の尊厳を傷つける行為とされ、土葬が信仰上絶対的に必要です。
しかし、土葬が可能な公的な墓地は、現在、全国でわずか10カ所程度しかありません。
特に九州地方にはゼロであり、この地域で亡くなったムスリムの遺体は、遠く離れた地域へ搬送しなければならない状況です。
ムスリムの人々のなかには日本人が嫌う重労働を担ってくれる方もおおく、日本経済においてムスリムの方々の果たす役割は年々、大きくなってきています。
法律上の問題と国への政治的解決要求
日本の法律である墓地、埋葬等に関する法律は、土葬自体を禁止していません。
多くの市町村では条例により土葬を制限しており、これが実質的な障壁となっています。
岩屋毅前外務大臣が、大分市議団(6人が要望書を提出)に同行し国に要求した背景には、この法律と現実のギャップがあり、「この難しい問題を市町村だけに任せず、国がしっかりとした基本ルール(ガイドライン)を作り、多様な人々が共生できる環境を整備すべきだ」という考えがあります。
「認めない」側の主張は?水質汚染が心配!
土葬墓地の整備に「認めない」と強く反対しているのは、自民党の地方議員を中心としたグループです。
彼らは、地域住民の安全と生活環境の維持を最も重視しています。
反対勢力の規模と水質汚染リスクの懸念
土葬に反対する立場を取る自民党の地方議員は、神戸市議の上畠氏らを中心に約100人近くが連名で要望書を国や党本部に提出する方針を固めています。
党内での影響力は無視できません。
彼らが懸念する最大の論拠は、土葬された遺体の腐敗に伴う病原菌や腐敗生成物による水質汚染リスクです。
特に日本の地理的・気象的条件(高い降雨量、地下水位の変動)を考えると、リスクは無視できないと主張されます。
住民合意の難しさと地域経済への影響
この懸念は、大分県日出町で土葬反対を訴えた候補者が町長選挙で当選し、計画がストップした事例が示すように、住民の間に深く根付いています。
また、水を生命線とする酒造業などの地域産業は、土葬墓地の存在自体が風評被害につながり、地域の経済に大きな打撃を与えるのではないかと不安視しています。
地域の経済活動に与える影響のゼロリスクを求めています。
結論 どちらの主張も大切 — バランスとガイドラインがカギ
この論争は、「信仰の自由」と「生活環境の安全」という、どちらも大切な価値を天秤にかける困難な状況です。どちらか一方の主張を切り捨てることはできません。
科学的管理と技術的基準の必要性
解決には、国が科学的・技術的な根拠に基づいた「ガイドライン」を策定することが不可欠とされています。
このガイドラインは、土葬による汚染リスクを最小限に抑えるため、海外の事例(例:埋葬深度1.8メートル以上の確保、地盤の選定)や、エンバーミング(遺体の防腐処理)の義務化といった厳格な基準を国が示す必要があります。
数値基準による地域社会の安心確保
さらに、水源地からの具体的な距離や、地下水位に関する数値基準を明確に設定することで、地域の安全を客観的なデータに基づいて確保し、住民の不安を解消することを目指します。
国がこれらのルールを示すことで、信仰の自由を守りながら、地域の安全と安心を確保するという、バランスの取れた解決策が見つかる可能性が高まります。
